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とある都市生活者の独白

東京に暮らす大学院生が思いつきでブログを書いています

プレミアムフライデーに関する素朴な疑問

社会

昨日は喫茶店がいつもより混んでいた。噂の「プレミアムフライデー」で早々に退社した会社員が暇を持て余していた。学生身分である私は毎日がプレミアム (だと思われがち) なわけで直接は関係しないのだが、単純にイベントとして非常に興味深く思ったので、色々と考えてみた。

www3.nhk.or.jp

プレミアムフライデーは、政府と経団連が提唱している、月末の金曜日に早期退社を促すキャンペーンである。電通社員の自殺を発端に「働き方改革」が政策課題として意識されてきた中で色々と注目を集めたようだ。

だけど、この企画は「働き方改革」としてはインパクトが弱い気がする。そもそも長時間の労働を前提とせざるを得ないような企業がプレミアムフライデーを取り入れることは難しいだろう。友達の新聞記者が「結局残業時間を減らしても仕事の量は変わらないし、仕事柄難しいよね」と言っていた。奇しくも昨日は経団連との交渉で連合が残業時間上限月100時間を容認したことが報じられており、なかなか長時間労働の構造自体を変えることができないことも明るみに出てきた。

そんな中で、プレミアムフライデーが「働き方改革」の一環であるかのように言われているわけだが、その本来の目的はデフレ改善を狙った消費喚起・内需拡大だと明記されている。そして、飲食業や旅行業などサービス産業の人達はむしろ普段よりも働かざるを得ないことも既に指摘されている。こうした産業は非正規雇用が多いこともあって、得をするのは限定された優良企業の正社員だけということになる。長時間労働の割合が高いのは企業への帰属意識の高い正社員だと思うので、労働時間に関する意識の改善にはなるのかもしれないが、人的リソースを増やして全体的な残業時間を減少させるという「働き方改革」の目的とはあまり関係がないと思う。

一方、プレミアムフライデーが家族と家で過ごしたり市民活動に参加するような契機となることも想定されているようだ。ならば、年末年始のように店を全部閉めて、コミュニティ意識を高めるようなキャンペーンのあり方も可能だとは思うのだが、すると消費はむしろ停滞してしまうことになる。結局、「働き方改革」と消費喚起は両立し得ない問題に思えてしまう。

このキャンペーンで「働き方改革」が進められているかのような印象を与えているが、その内実はやはり商業的なキャンペーンに過ぎないのだろう。「クリスマスには家族にプレゼントを」「バレンタインに恋人にチョコを」というようなことを百貨店や旅行代理店に代わって政府が打ち出しているだけにも思える。既にプレミアムフライデーを導入できるほど余裕のある大企業が生産を抑え、その社員が消費を通じて不振な産業に財を再配分しているということでもあるのだろうか。だけど、毎月末金曜日に忙しくなる非正規雇用者の給与にその利益が還元されるのかも不明瞭だ。

いずれにしても掛け声だけでナンセンスな感じがする。それがゆえにキャンペーンなのかもしれないし、そういう意味では残業時間を減らそうと言うのも、やはり仕事の総量は変わらないのだから掛け声に過ぎない。一方、実際に「頑張ることを頑張る」タイプの人が出世することで会社内の秩序が長時間労働に傾くこともあるわけなので、それが働く人の意識を変えることもあるのかもしれない (長時間一緒にいる人ほど高く評価される傾向をハロー効果と言うらしい)。だけど、「働き方改革」で重要なのが人的リソースの不足と作業効率の低さであるとすれば、いかに出産などの理由で正社員のライフコースから外れた非労働者を活用できるのか、いかに無駄な会議や移動時間を減らしてメリハリをつけられるのかが課題であって、あまり本質的ではない話題によって曖昧にされることがないと良いなとも考えさせられる。